アイノラ
アイノラ(Ainola)は、フィンランドの作曲家ジャン・シベリウスとその妻アイノが家族とともに1904年の秋から1972年まで暮らした家。名称は「アイノの居場所」という意味である。建屋は1974年から博物館として一般に公開されている。アイノラはフィンランドの首都、ヘルシンキから北に離れたヤルヴェンパーのトゥースラ湖の眺めの良い岸辺に建てられている。設計を担ったのは著名な建築家のラルス・ソンクである。シベリウスがソンクへ頼んだのは湖への眺望を確保すること、ダイニングに緑色の暖炉を設置することの2点だけだった。シベリウスが室内で作曲中に気が散ることを嫌ったため、水道管は彼の生前には敷設されなかった。 首都の喧騒から離れたアイノラは、シベリウスが創作に乗り出す際に必要とした平穏をもたらした。彼の伝記作家であるエリック・タヴァッシェルナは次のように記している。「シベリウスがはじめてヘルシンキを離れた頃は、ヤルヴェンパーは大部分が手つかずの田舎だった。子馬や羊が家への道をほとんど探るようにして進み、ときおりヘラジカが堂々たる立ち姿を見せていた。」近所には他にも芸術家の家族が複数住んでおり、シベリ…